美容皮膚科医@銀座のベル先生です 🙂
今回は医療脱毛で使われいるレーザーについての特徴をお話。
メリット・デメリットを公平な視点でお話しします。
しかもクリニックのHPは、そこのクリニックの脱毛機べた褒めしてるに決まっているから、警戒しちゃう
↓脱毛の基礎編は8000文字と長いけど、目次使って上手に読んでください
この記事を読んで分かること
・アレキサンドライト・ダイオード・ヤグレーザーのメカニズムと特徴比較
・蓄熱式レーザーの本当のメカニズムとメリット、一部で心配されている事
・蓄熱式レーザーは抜けない?危ない?に関しててベル先生はこう考える
・おすすめの脱毛機
Contents
医療脱毛レーザーの簡単な歴史
脱毛の歴史は、まず針脱毛から始まりました。
第1の時代 針脱毛
第2の時代 レーザー脱毛(ロングパルスアレキサンドライトレーザーから始める)
第3の時代 蓄熱式レーザーによって、幕開けとなると予想されています。
(2019年美容皮膚科学会総会より)
この流れのイメージは、以下のような脱毛施術にどんどんなっていっています。
より痛みが少なく
より早く
低リスク
低コスト
今から脱毛始める人が、正直羨ましいです!
アレキサンドライトなどのショット打ちのレーザーも、後述するけど、それの良さがあるよ
ショット打ちのレーザーが出た時も、「本当にレーザーで脱毛できるの?」と疑問の声が上がっていたようです。
蓄熱式も新しい機械であり、「そんなメカニズムでしかも痛みも少なく脱毛できるの?」と疑問の声はたくさん上がっていました。
まだ比較的新しい治療で、一部疑問視する声もあるので、また後ほどご紹介します。
アレキサンドライト、ダイオード、ヤグ、光などショット打ち医療脱毛レーザー
ショット打ちレーザー(アレキサンドライト・ダイオード・ヤグ)のメカニズム
そもそもレーザーって何?
レーザーってよく聞くと思いますが、実はあまり知らないですよね。
レーザーって実は略語なんです。LASER(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)
とりあえず脱毛レーザーに関係する所を、分かりやすく説明すると、
レーザーは反応するもの(ターゲット)がピンポイント!
そのターゲットを決めるのが波長
波長が短いと浅くメラニンへの反応が強い、
長い方が深くメラニンへの反応が弱め
(他のレーザーにおいて波長は深さ以外も決めてます)
※メラニンに反応しにくいから、表皮のメラニンに反応せず深くまでレーザーが届きます。
↓こっから下は細かいので飛ばしてもOK
その波長を出すのが得意なレーザーをアレキサンドライトとかヤグとか名前をつけているイメージです(正確にはちょっと違うけど、とりあえずそれでOK)
例えば,
ロングパルスアレキサンドライトレーザーの波長は755nm
ロングパルスヤグレーザーの波長は1064nm
私、シミにヤグレーザーでトーニング受けているんだけど、脱毛効果もあるってこと?
レーザートーニングやシミ取りで使うレーザーは、
バルス幅が脱毛用のレーザーとは違うから、脱毛効果はないです(毛の色は抜ける)。
このパルス幅によって、周りの組織にどのくらい変化をもたらすか決まるよ。
脱毛に使うのはロングパルスだけです。
パルス幅とは、どれだけの間レーザービームが出ているか、ということ。
パルス幅が長い(長くレーザーが出ている)ほど、ターゲットの周りの組織にも影響が出ます。
脱毛のロングパルスは長い間出ているから、ターゲット(毛のメラニン)だけでなくその周りの組織にも熱ダメージを与えます。
発毛中枢は毛の周囲にあるので、パルス幅を長くすることで、毛だけ出なく周りの発毛中枢まで熱を与えています。
通常のシミ取りやレーザートーニングは、もっとパルス幅が短いので、シミのメラニンだけにダメージを与えているイメージです。だから脱毛には向かないです。
最近だとピコ秒レーザーというさらに、パルス幅が短い機械が出てきて注目を集めています(もちろん脱毛はできない。さらにダーゲットのみにダメージを与えるレーザー)
ショット打ちのレーザー脱毛機(熱破壊型レーザー脱毛機)
単発で、ショットで打っていくレーザーになります。
巷では熱破壊型レーザー脱毛、HR方式と呼ばれている時もありますが、個人的にはショット打ち脱毛機の方が誤解のない呼び方で好きです。
1ショットで熱量をしっかり発毛中枢(毛を作るのに関与する器官の総称、図の赤丸のあたり)に届けることで、破壊します。
そのためショット打ちのレーザーは、ピンポイントに強力なエネルギーを出します。
強力な熱エネルギーによりお肌の表面がヤケドしないように、冷風が出たり、冷却装置が付いていたりと様々な工夫がされています。
どのくらいの深さに届くか、どの程度メラニンに反応するかという波長が違う!
だから痛み、抜け感、色黒でもいいか、産毛への効果など違いが出てくるよ
波長の違いによって、それぞれのレーザーが得意とするものが少しづつ違ってきます。
3つのショット打ちレーザー脱毛機
波長が短い順に、(より浅く、よりメラニンに反応する順)
アレキサンドライトレーザー(755nm)
ダイオードレーザー(800-940nm)
ヤグレーザー(1064nm)
※全て正式名称はロングパルスが付きます。
一般的なイメージはこんな感じです。
※実際には太い毛の発毛中枢は深いところにある、産毛は浅いところにあることが多いです。
この3つのレーザーは本当に一長一短なんです。
【ショット打ちレーザーの簡単な特徴比較】※蓄熱式は別
アレキサンドライト | ダイオード | ヤグ | |
深さ | 浅い | 中 | 深い |
痛み | 弱い | 中 | 大 |
濃い毛の抜け感 | 良 | 良〜中(諸説あり) | 弱 |
産毛 | × | △ | △ |
色黒肌 | × | △ | ◯ |
ヤケドのリスク | 大 | 中 | 小 |
硬毛化リスク | 大 | 中 | 小 |
では詳しく解説していきます。
アレキサンドライトレーザー(波長が短い、浅い)
元祖レーザー脱毛機のアレキサンドライトレーザー。
波長が短いので、デメリットが多いように見えますが、実はメリットもたくさんあります。
レーザーフェイシャルの補足
顔に対して、脱毛しつつ様々な美肌作用があるので、「レーザーフェイシャル」という名前で呼ばれています。
どのレーザー脱毛機でも熱を入れるので、ある程度は美肌効果はあります。
その中でももっとも効果の高いものが、アレキサンドライトレーザーです。
脱毛以外の主な美肌作用
メラニンに反応しやすいてため、シミが薄くなる。
ニキビや毛穴に効果がある人もいる(メカニズムははっきりしていない)
ハリ感も出る(波長が長いレーザーの方がききます)
シミとかニキビ気になるけど、これで全部完結できるのね!
だからこれだけで、シミが取れたりニキビがなくなる人は珍しいよ。
あくまで脱毛のオマケ、美容医療の入門編の治療ってイメージね。他の治療やったことある人は満足できないかも。
ダイオードレーザー(波長は中間)
ダイオードというと蓄熱式というイメージですが、普通のショット打ち(熱破壊、HR式)もあります。
なんか中途半端に聞こえるかもしれませんが、ライトシェアデュエットのように吸引しながら照射することで、痛みをなるべく減らす工夫をされたものもあります。
ヤグレーザー(波長が長い、深い)
痛い割に抜け感が悪いので、あまり日本では使われていないことが多いです。
例外的に以下には使います。
男性のヒゲ(毛が深いから)
肌色が濃い部分(地黒、VIOなどの色素沈着部)
硬毛化の治療
実際にはGentleMaxProみたいにヤグレーザーだけではなくアレキサンドライトレーザーも搭載した機械が多いです。
ただ2波長を同時に照射するのは蓄熱式以外ではないです。
エリートMPXのようにアレキサンドライトを打った直後にヤグレーザーが出る機械はあります(実際はほぼ同時に照射されているように感じる)
IPL(光・フォト)脱毛
IPLは光を用いているので、ピンポイントではなくて、波長が広いです。
例えばアレキサンドライトレーザーだけど755nmという波長(ターゲット)にしか効かない。
でもIPLは機械によりますが、770-1200nmなど幅広い波長(ターゲット)になります。
波長は長いのですがピンポイントで効かない分、エネルギーが入りきらないことがあります。
医療のIPLの出力でも、アレキサンドライトレーザーと同じくらい硬毛化しやすいという報告もあります。
蓄熱式レーザー(SHR方式)
蓄熱式脱毛レーザーの仕組み
蓄熱式レーザー脱毛は、以下のメカニズムを利用しています。
発毛中枢は熱がこもりやすい
表皮と毛幹(毛自体)は熱が逃げやすい
ショット打ちよりもかなり弱いパワーを連発します。(1秒間に10回程度)
すると、以下の図のようなことが起きます
上手いこと発毛中枢だけに、どんどん熱が入る→破壊
皮膚の温度は毎回逃げるので、上昇しない→ヤケドしない、痛み少ない
レーザー照射(図の青色)は1秒間に10回程度あります。
そのため以下のようなメリットがあります
痛みは少ない(暖かいという感じと熱いの中間くらい)
濃い肌色に使ってもヤケドになりにくい
毛嚢炎ができにくい←毛の熱が逃げるため
産毛にも効きやすい←産毛の発毛中枢は温度が上がりにくいけれども、何度も発毛中枢に熱を与えるため、破壊しやすい
※白髪は無理
照射のスピードが早い(ヘッドが大きい場合のみ。小さいと逆に時間かかる)
とりあえず以上の仕組みだけ、覚えておけばいいのではないかと。
あとで後述するので、知りたい人は読んでね。
蓄熱式レーザーとショット打ちレーザーの比較
アレキサンドライト | ダイオード | ヤグ | 蓄熱式 | |
深さ | 浅い | 中 | 深い | 浅〜深(機械による) |
痛み | 弱い | 中 | 大 | 最弱 |
濃い毛の抜け感 | ◯ | ◯〜△ | × | ◯〜△ |
産毛 | × | △ | △ | ◯ |
色黒肌 | × | △ | ◯ | ◯ |
ヤケドのリスク | 大 | 中 | 小 | 小 |
硬毛化リスク | 大 | 中 | 小 | 小〜中 |
最近の蓄熱式脱毛はいろんな深さにアプローチできる
個人的には、蓄熱式レーザーのメリットは色々な波長の光を同時に出せることです。
※機械によって、蓄熱式脱毛器でも1種類の波長しか搭載していない機械もあります
最新の蓄熱式脱毛器では755、810、1064nmの3種類の波長が同時に出せます。
お気付きの方もいるかもしれないですが、755nmがアレキサンドライト、810nmがダイオード、1064nmがヤグと同じ波長なので、こんな感じで幅広い部位がターゲットとなります。
1つの波長しか入っていないのと、3つしか入っていないのでは、ターゲットとなるところが違うのがイメージつきやすいと思います。
実際には、男性のヒゲのように濃い毛の発毛中枢は深く、産毛のように薄い毛の発毛中枢は浅いです。蓄熱式脱毛器は様々な種類の毛に対応できます。
3波長同時に出せる蓄熱式脱毛機のメリット
抜け感の改善
濃い毛から産毛まで脱毛可能
硬毛化しにくい
濃いシミの上の毛も抜ける
ソプラノチタニウムとソプラノアイス・プラチナムが代表
蓄熱式脱毛は抜けない?のか
今の所は蓄熱式がショット打ちよりも抜けないというデーターはないです。
個人的には、蓄熱式が抜け感が悪いと感じる人がいる理由はいくつかあります
・毛が抜けるまでの期間が3週間ほどかかることもあり、長め
・ショット打ちレーザーのようにポロッとは抜けない
初期の蓄熱式脱毛では、1種類の波長しかなく熱が入り切らずに抜け感が悪いことはあったかもしれないですが、現在は複数波長が主流なので、抜けやすくなっていると考えられます。
あとは蓄熱式脱毛器はたいてい、ショット打ちモードもあります。
なので、どうしても蓄熱式で抜けにくいな、と感じる部分は、ショット打ちしてもらうことも物理的には可能です。
ちょっとオタクなバルジ領域の実際
本当にバルジ領域を完全に破壊させたら、そこには幹細胞があるから傷が治りにくくなるはずなのよね。
ちょっとマニアックな話なので、気になる人だけ読んでください。
バルジ領域とは、幹細胞が居て”毛を生やす指令”を出しています。
正確にいうと毛包幹細胞、色素幹細胞の2つがいます。
実はこの毛包幹細胞ですが、毛を作る指令だけでなく、皮膚や筋肉などの再生にも関与しています。
ってことは、本当にバルジ領域破壊してたら、傷が治りにくい苦なるわけで大問題ですよね。
今の所は、そのような副作用の報告はされていないです。
しかしより産毛に効くのは、やはりショット打ちレーザーよりバルジ領域を機能が低下させる可能性もあるという意見もあり、なんとも言えないです。
基本、大人に対してだったら問題なし、とする意見がほとんどです。
ただし子供に対して、蓄熱式レーザーを使うことは賛否両論あります。
ベル先生のおすすめ
結局脱毛レーザーはどれも一長一短です。
どれを選ぶかはそれぞれの考え方、希望する部位、肌質、予算など色々なことが関連しています。
次回は「具体的にこんな人なこの脱毛機がおすすめ」と言った選び方をお手伝いできる記事を書いていきます。
やはり万人(子供に対しては賛否両論)におすすめできるのは、3波長同時の蓄熱式レーザーです。
↓実際にどうやってクリニックを選ぶかは、こちらも参考にどうぞ