美容皮膚科医@銀座のベルです。
保湿は大切って知ってると思うけど、どうしてか知ってますか?
極論だけど、保湿するだけなら、ぶっちゃけ肌に合っていればなんでもOK!笑
でももちろん、理論的に優れている成分はあるし、メカニズムも理解しておくと便利だから紹介するね
この記事を読んでわかること
・保湿と関連する皮膚の構造
・なぜ保湿が大切なのか
・なぜ乾燥してしまうのか
・おすすめの保湿成分
Contents
健康な肌とバリア機能が壊れた肌(乾燥肌・敏感肌)の違い
健康な肌について
健康なお肌は、こんな構造になっています。
保湿と最も関連の深い角質層(肌のラップ構造)にフォーカスして説明していきます。
健康な肌とは
・紫外線、アレルゲンなどの物質を肌の内部に入れない(バリア機能)
・肌の水分をキープする
・十分な水分や栄養分を自分の肌の細胞が作っている
美容面でのメリット
・キメが整い、水分も多いため綺麗に見える
・肌トラブルを起こしにくい、老けにくい
・紫外線ダメージに強くなる
・浅い層だけでなく真皮の状態もよくなる
注意点
保湿による美肌作用はあくまで基礎です。
でも保湿ができてなくて肌が健康出ないと、美肌治療が進まないです。
保湿は美肌治療における、土台な感じですね。
保湿剤だけでは回復がしにくいもの
例1:ほうれい線やゴルゴ線のような深いシワは変わらない
例2:できてしまったシミも変わらない
例3:深い層のたるみにも効かない
例4:それなりに湿疹ができている場合は保湿だけでは治らない可能性高い
乾燥肌・敏感肌(バリア機能が壊れた肌)の構造
バリア機能が壊れた肌とは
・紫外線もアレルゲンも肌に入ってきてしまう。
・水分や栄養分も飛んでいってしまう
・自分の肌細胞が作り出す栄養分が少ない
美容面でのデメリット
・見た目がわるい(粉吹き、クスミ、水分ない感じ)
・湿疹、ニキビ、アレルギーなど見た目に関わる病気が起きる
・ターンオーバーもみだれ、老けやすい
・かゆくなる→掻く→さらに乾燥とバリア機能低下→さらにかゆい という負の連鎖
角質のメカニズム&それを補う成分
ではお肌のラップの角質を構成する成分を見ていきましょう。
厚さも0.02mmとほぼラップと同じ、役割も内部のものを守るとラップとそっくり。
健康な角質に必要な3つの成分を、保湿剤と関連させてご紹介。
皮脂膜(上手のオレンジのところ)
角質層のさらに上にある、バリアのバリア。
名前の通り脂でできていて、構成成分はスクワレン、トリグリセリド、脂肪酸、コレステロールなど。
大半は皮脂腺から作られて、肌の上に広がります。
・とても大切だけど、過剰な場合は見た目もオイリーな感じに見えます。
・バリア機能が弱っていて、皮脂だけ過剰の場合は、ニキビや脂漏性皮膚炎を生じる可能性があります。
ここのを整えてあげる保湿剤を、「エンモリエント」と言います。
有名なのはワセリンですね。
後に後述する、角質の内部の成分を補充するNMFや細胞間脂質の方が保湿力は高いです。
でもお肌が元々健康な人が一時的に調子が悪いだけとか、水分量の多い子供なら、このエンモリメントだけでもすぐ潤います。
・ラップのラップ剤がエンモリエント(皮脂膜を補う)
・だからワセリンは皮膚の保護として使われる
・思春期前の子供など肌の水分量が多い場合は、これだけでも十分改善
天然保湿因子NMF(図の黄色)
お肌(表皮や角質)の細胞が作り、角質の中にあります。
主な役割は角質の中の水分をキープ→皮膚のバリア機能作用
アミノ酸や乳酸が主な成分です。
乾燥肌や敏感肌になる主な要因は、NMFより後述する角質細胞間脂質の減少
NMFを補うことで肌の水分量をあげる効果をヒューメクタントといいます。これをモイスチャライザーと呼ぶこともあります。
みなさんに馴染み成分と商品名は、
ケラチナミン(尿素)
ヒルドイド(ヘパリン類似物質)
ユベラ(ビタミンE)
・角質内部に水分をキープしておくのが、NMF
・ワセリン<ケラチナミン、ヒルドイドで保湿力あり
(皮脂膜を補うエンモリモントより、NMFを補うヒューメクタントの方が有効)
・とはいえ最強なのは、下記の細胞間脂質!
角質細胞間脂質(図の青色)
肌の細胞が作る、角質層の内部(角質の細胞の間)にある脂。
ぶっちゃけこの3つの中で一番大切ですからね!
この角質細胞間脂質の半分以上がセラミドです。
ちなみにセラミドをもし全部失うと、お肌の水分は80%低下します。
マニアックだけど、さらに詳しく細胞間資質をみるとこんな感じ。
これが噂の「ラメラ構造」。
水色が水分、白いニョロニョロの所に脂がある感じ。
詳しいことはいいので以下だけ覚えておきましょう。
・上手いこと、水と脂を皮膚の中に保ってる
・外部からの水、油、その他の細菌やアレルゲンなどの物質を通さないように保護
セラミドがエンモリエント効果なのかヒューメクタント効果なのかは、意見が分かれますが、まぁ両方あるのかなと個人的には思います。
・セラミドは、肌のバリア機能にも最も大きく影響します。
・セラミドは最高の保湿成分(ただし他の成分より値段が高め)
・セラミドを塗ると、肌の水分量もバリア機能も回復する
(水分量だけ見ても、ヒルドイドより優れている)
ヒルドイド最強神話は嘘
めっちゃ研究されてるけど、セラミドの方が圧倒的に有利よ。
セラミドは高いから、保険の薬として出せないって説。(詳細不明)
アトピー性皮膚炎の患者さんの皮疹が無い部分に、ヒルドイドとセラミドを塗って、水分量やバリア機能を比べると実験は沢山されています。
ほとんどの実験でセラミドの方が、結果が良いです。
アトピー性皮膚炎など湿疹が強い人へ
アトピー性皮膚炎で湿疹が出ちゃっている時には、やっぱりその部分にはステロイド外用は必要です。セラミド塗ってれば湿疹がなくなることは無いですからね。
(要するに湿疹は炎症だから、炎症を直す力はセラミドには無い)
アトピー性皮膚炎で湿疹に悩んでいる人は、自己判断や民間療法に頼りたくなる気持ちもわかるけど、ちゃんと保険診療を受診してステロイドなど湿疹を抑える薬を使ってね。
(ステロイドの外用は変な噂いっぱいあるけど、嘘が多すぎます!)
セラミドに関しては、もっと詳しくおすすめの商品とともに他の記事で説明します。
おまけ:実は保湿により真皮とも関連
皮膚の乾燥は、皮膚の浅い所(表皮)だけの話と思われていましたが、実は皮膚の浅い所と深い所を結ぶシグナルにより、お互いに関連しています。
なので、ちゃんと保湿すると、真皮の状態もよくなるので、ハリ感のある若い肌がキープに少しは役立ちそうです。(保湿だけでは、ハリ感の改善に限界はあります)
ビタミンA(レチノール)とセラミドどっちが良いの?
セラミドは保湿とバリア機能回復って意味では最強。でもあくまでその成分で潤っている感じ。
ビタミンAは肌の細胞を元気にして、長期的に見ると自分の力で潤えるようになるよ
尊敬する美容皮膚科の先生が、美容皮膚科学会でこのように言っていました。
「化粧品の力で潤いたいなら、デパートへ(保湿成分が沢山配合されている)
自分の肌の力で潤いたいなら、美容皮膚科へ(ビタミンA化粧品のラインナップが良い、美容施術もあり)」
だから全然違うんです。
セラミドの役割はあくまで、肌の水分量増加やバリア機能向上です。
塗っている時期の保湿能力だけで言ったら、ビタミンAはセラミドには叶いません。
でも、ビタミンAを塗ることで自分の細胞が元気になるので、長期的に見ると自分で保湿成分を作れるようになります。
他にもターンオーバーを整えたり、真皮のコラーゲンを増やしたり、いわゆる“アンチエイジング作用”はビタミンAにしかありません
↓ビタミンA(レチノール)に関してはこちらをどうぞ
個人的には、こんな使い方感じがおすすめです。
肌の調子が悪い人→まずセラミドでバリア機能を回復(必要時は、保険診療へ)
乾燥しやすい人、ビタミンA初心者→セラミドとビタミンAの併用
脂性肌、ビタミンAに慣れている→ビタミンAだけでもOK
私の一番オススメのビタミンAはエンビロンです。
お手頃なものなどは、セラミドに関する記事で紹介しますね。
肌が乾燥してしまう原因&バリア機能が落ちるメカニズム
肌が乾燥する原因
肌が乾燥する原因はたくさんあります。
・体質:遺伝的因子もいくつか見つかっています。
・加齢:皮脂膜も細胞間脂質も減ります
・外の環境:湿度が低い環境にいるとその後も数日間乾燥肌が続くと言われています
・生活習慣:寝不足、栄養不良、ストレス、喫煙、過労
・肌を擦りすぎ:化粧、コットン、マッサージ、マスク
・正しく洗浄できていない:すすぎきれていない事多し
・刺激物:花粉や合わない化粧品成分
↓肌を乾燥させない洗顔の仕方はこれ見てください
https://drshosho.com/skincare_clensing
角質は分厚いほうがいいのか?薄い方がいいのか?
そんなことないよ。厚すぎても薄すぎてもよくないの。
例えば老人の肌は角質が分厚いんだけど、肌の細胞が元気じゃなくて、必要な成分を十分に作れないから、乾燥してるよ。
ターンオーバーは遅くなりすぎても、早くなりすぎても乾燥する。
(肌の細胞の質が下がるため)
早くなるもの:湿疹、炎症
遅くなるもの:加齢、ストレス
乾燥肌はどう作られるのか?
乾燥肌になってしまうメカニズムは、以下の1と2が複合されており、どんどん肌の乾燥が悪化していきます。
そして乾燥から肌のバリア機能低下(いわゆる敏感肌状態)へと繋がり、種々のトラブルを起こします
1:皮脂膜・NMF・細胞間脂質を作ってもすぐ奪われる
擦ったり、掻いたり、洗顔料が残っていたり、肌に炎症がおきていると、作っても作ってもどんどん外に出ていきます。
アウトが増える感じ。
2:皮脂膜・NMF・細胞間脂質の作られる量が減る
様々な原因により、ターンオーバーも乱れ、角質細胞の質が下がり元気がなくなりますり、作る能力が落ちます。
インが減る感じ。
1と2により、アウトが増え、インが増えることで、肌の中の皮脂膜・NMF・細胞間脂質が減る事で、肌が乾燥します。
負のスパイラル
上記のような肌の中の皮脂膜・NMF・細胞間脂質が減ることは、お互いに絡み合っているので、容易に負のスパイラルが起きます。
さらに痒みにより掻くので、さらに乾燥・バリア機能の低下を起こします
そしてさらに痒くなります。
痒みの負のスパイラルですね。
どうしてもかゆいときは、冷やしたり、ステロイドの軟膏をぬることをおすすめします。
乾燥がひどくなり、湿疹や肌の病気を引き起こさないようにしましょう。
おまけ:皮膚のバリア機能って何?
だから他のバリアが強ければ、ラップが破れても大丈夫な人もいるイメージ
フィジカルバリア:この記事で散々説明してきた、角質のラップとしての役割のことです。
バイオケミカルバリア:抗菌ペプチド(最近流行りの美肌菌。まだわかっていないことも多いです)
免疫バリア:皮膚の中にも免疫細胞がいます(ランゲルハンス細胞、T細胞)
やっぱりフィジカルバリアが占めている割合が強いです。
そのため乾燥などでここが壊れると、バリア機能が落ちてしまい、敏感肌となる人が多いです。
まとめ
・肌が乾燥すると、バリア機能が低下し、どんどん悪くなる負のスパイラルに陥る
・保湿能力はエンモリエント(皮脂膜)<ヒューメクタント(NMF)<セラミド(細胞間脂質)